これだけは知っておきたい!職場のメンタルヘルス対策はじめの一歩

これだけは知っておきたい!職場のメンタルヘルス対策はじめの一歩-エリクシア産業医

職場のメンタルヘルス対策入門 基本をわかりやすく解説します!

近年、職場のメンタルヘルス対策が重要視されており、積極的に取り組む会社が増えてきました。この背景には、経済や産業構造の変化、働き方の多様化などにより強い不安やストレス、悩みを抱える労働者の割合が高くなっていることに加え、メンタルヘルスに対する人々の興味関心が高まったことなどがあります。

実際に、業務による心理的負荷を原因として精神障害を発症したり、最悪の場合には自殺してしまったとして労災認定が行われる事案が年々増加しています※。また、職場のいじめ・嫌がらせに関して、都道府県労働局、労基署に寄せられた相談件数も増加傾向です。

メンタルヘルス不調は、必ずしも個人の問題というわけではなく、業務内容、長時間労働、ハラスメント、人間関係、職場環境等が要因となっている場合もあります。メンタル不調を来すことで、身体面にも影響を及ぼし、労働者が本来持つ業務遂行能力が十分に発揮できず、生産性の低下を招いたり欠勤や休職、退職に至ったりすることも少なくありません。そのため、職場におけるメンタルヘルス対策の推進は会社にとって急務であるといえます。

今回は、はじめてメンタルヘルス対策を取り組む会社向けに、必ず知っておいてほしい『3つの予防』と『4つのケア』の取り組みの進め方について解説していきます。ぜひ最後までお読みください。

※【参考】厚生労働省『令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します』

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必ず押さえておきたい『3つの予防』と『4つのケア』

厚生労働省では、国、会社、労働者をはじめとする関係者が一体となって労働者の安全と健康を守り、労災防止に取り組むように、労働安全衛生法の規定に基づいて『労働災害防止計画』というものを策定しています。その計画において重点施策をいくつか定めており、その1つに「メンタルヘルス対策の推進」が挙げられています。厚労省はメンタルヘルス対策の推進のために、「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」を策定し、職場におけるメンタルヘルス対策を推進しています。

職場におけるメンタルヘルス対策の取り組みは、目的や実施主体によって分類されています。まず、目的による分類として『3つの予防』があります。次に実施主体による分類として『4つのケア』があります。この、『3つの予防』と『4つのケア』はメンタルヘルス対策の基本的な考えとなりますので、しっかり押さえておきましょう。

『3つの予防』とは?

職場のメンタルヘルス対策は、目的によって一次予防・二次予防・三次予防の3段階に分かれます。それぞれの予防の内容について確認していきましょう。

●一次予防(健康増進・予防)

一次予防は、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する取り組みです。対象としては、健康な労働者も含む全労働者です。

<一次予防:具体的な取り組み例>
・労働者によるセルフケア
・管理監督者によるラインケア
・ストレスチェックの実施
・職場環境の改善(適正な業務配分、人材配置、指揮命令系統の明確化、室温や照明など作業環境の改善など)

●二次予防(早期発見・対処)

二次予防は、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う取り組みです。対象は発症の疑いがある労働者やハイリスクな労働者です。

<二次予防:具体的な取り組み例>
・相談窓口の設置
・メンタル不調疑いの人への産業医面談
・過重労働面談

●三次予防(治療・復職支援・再発防止)

三次予防は、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援等を行う取り組みです。対象はメンタル不調者や不調から回復して職場復帰をする労働者です。

<三次予防:具体的な取り組み例>
・復職後のフォローアップ体制の整備
・管理監督者に対する復職者への対応方法の教育

『4つのケア』とは?

上記3つの予防に加えて、『4つのケア』計画的に継続して実施していくことが重要です。この『4つのケア』はメンタルヘルス対策の実施主体によって分類されており、厚労省の指針(「労働者の心の健康の保持増進のための指針」)でも示されています。職場のメンタルヘルス対策において軸となる活動であるため『4つのケア』の内容についても確実に押さえておきましょう。

●セルフケア

労働者自らが行うケアです。事業者は労働者のセルフケア能力を高めるための支援を行いましょう。例えば、ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解を促すための教育研修やストレス対処法を身に着ける研修、ストレスチェックの実施による自身のストレスへの気づきを促すことなどが重要です。

●ラインケア

部下を持つ管理監督者が行うケアです。職場環境の改善、部下の不調を早期に発見・対処できるようにするためのラインケア研修の実施、職場復帰支援などがあります。

●事業場内の産業保健スタッフによるケア

自社にいる産業医や保健師、カウンセラーなど産業保健スタッフによるケアです。産業保健スタッフはセルフケアやラインケアが効果的に実施されるように労働者や管理監督者の支援を行ったり、人事総務担当と連携して、会社のメンタルヘルス対策の立案・実施をします。

●事業場外資源によるケア

自社外の専門家によるケアです。メンタルヘルス対策は専門知識を有することも多いため、専門家のサポートを取り入れると、より安全で効果的な取り組みが行えます。会社は専門家から情報提供や助言を受けるなど外部サービスを活用したり、外部専門家とのネットワークを形成したりします。

はじめてのメンタルヘルス対策の進め方

ここまで職場のメンタルヘルス対策において必ず押さえておきたい『3つの予防』と『4つのケア』の内容について確認しました。次は、実際にはじめて会社でメンタルヘルス対策の取り組みを進めていく際の大枠の流れについてご説明します。

STEP1:メンタルヘルス対策に関する方針表明

まずは全労働者に対して、会社としてメンタルヘルス対策を推進してくことを表明しましょう。経営理念や経営方針にメンタルヘルス対策に取り組むことを明記して労働者に周知し、理解・協力を促し、組織全体でメンタルヘルス対策に取り組んでいく風土を醸成することが大切です。

STEP2:衛生委員会における調査審議

メンタルヘルス対策の推進にあたっては、会社が労働者の意見を聴き、会社の実態に即した取り組みを行うことが重要です。衛生委員会にて職場の実態や課題、メンタルヘルス対策推進の目的などを話し合いましょう。また、会社が労働者のメンタルヘルス対策のために行う教育研修などの情報提供、相談体制や職場復帰のサポートなどについて定める「心の健康づくり計画」の策定や実施体制の整備、具体的な実施方法、実施にあたって個人情報保護に関する取り決めなども衛生委員会において審議します。

STEP3:心の健康づくり計画の策定

メンタルヘルス対策は一朝一夕で成り立つものではありません。中長期的な視点で、計画的に継続して行うことが重要です。そのためには、前述した「心の健康づくり計画」を策定する必要があります。「心の健康づくり計画」の策定は、労働安全衛生法で定められた義務です。策定においては、下記の7つの事項を満たすようにしましょう。

❶事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
❷事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
❸事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
❹メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
❺労働者の健康情報の保護に関すること
❻心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
❼その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること  

STEP4:取り組みの実施

計画を策定したら、3つの予防と4つのケアが適切に実行されるように各所連携しながら取り組みを実施していきましょう。実施の際の注意点が2つあります。個人情報保護への配慮心の健康に関する情報を理由とした不利益な取り扱い(解雇、退職勧奨、不当な配置転換・職位変更など)の禁止です。

STEP5:見直し・評価

継続的に有効な取り組みを実施していくために、実施後は必ず見直しと評価をおこない、PDCAサイクルに沿って取り組みを進めていきましょう。

メンタルヘルス対策 成功のポイント

メンタルヘルス対策を進めていく上で成功のための3つのポイントをご紹介します。

取り組みは自社の課題に合っていますか?

初めてメンタルヘルス対策に取り組む会社は特に、初めはなかなか上手くいかず、思うように効果が得られないことがあるかもしれません。その原因として多いのが「取り組み内容が自社の課題に即していなかった」ということです。業種や勤務形態、就業環境、職種によってメンタルヘルスに関する問題は異なります。他社で上手くいった取り組みが自社でも上手くいくわけではありません。自社に合った取り組みを実施できるように計画・実施の前に必ず状況把握のための調査をするようにしましょう。

短期的な取り組みになっていませんか?

メンタルヘルス対策は、目に見えてすぐに効果が出るものではありません。中長期的な視点で、計画を立てて取り組むようにしましょう。

3つの予防をバランスよくできていますか?

メンタルヘルス対策というと、つい二次予防(早期発見)や三次予防(復職支援)に重きを置き、取り組みが行われることが多いです。もちろん二次予防・三次予防の優先順位としては高いですが、あくまで対処療法です。中長期的なメンタルヘルス対策を考える上では、一次予防(未然防止)も忘れてはいけません。

まとめ

メンタルヘルス問題は、労働者だけでなく、職場全体にも大きな影響を及ぼします。メンタルヘルス不調を単に個人の問題とするのではなく、職場全体でもメンタルヘルス対策に取り組むことが重要です。初めてメンタルヘルス対策に取り組む会社は、まずは基本の『3つの予防』と『4つのケア』をしっかり押さえ、計画的に継続して取り組みを実施できるようにしましょう。

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この記事の執筆者:エリクシア産業保健チーム

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この記事は、株式会社エリクシアで人事のお悩み解決に携わっている産業保健師チームが執筆し、産業医が責任をもって添削、監修をしました。

株式会社エリクシアは、嘱託産業医サービスを2009年より提供しています。衛生管理体制の構築からメンタルヘルス対策、問題行動がある社員への対応など「圧倒的解決力」を武器に、人事担当者が抱える「ヒトの問題」という足枷を外す支援を行っています。

【記事の監修】
産業医 上村紀夫
産業医  先山慧

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